空売りを利用した株取引は、目的に応じていくつかの手法が考えられます。
優待クロス取引狙いの空売り、デイトレによる下落局面での空売り、スキャルピングでの超短期取引における空売り等です。
初心者から上級者まで、様々な目的で空売りを行いますが、今回はその中から、初心者でも馴染みやすい中長期保有現物株式へのリスクヘッジについて紹介します。
目次
長く株式投資を行っている投資家は経験されている通りですが、数年に一度のペースで世界恐慌の如く、大幅下落が続く市場が見られます。
近年ではトランプ政権発足後、中国との第三次世界大戦と言われた経済制裁で、世界中の相場が大混乱しました。
また、リーマンショック時には日経平均は7,000円を割り込みましたし、その傷から経済復興に向かっていた中、東日本大震災が発生し、日経平均は8,227円まで下落しました。
リーマンショックでの下落率は最大40%、東日本大震災では同20%でした。
リーマンショック時に現物株式が1,000万円の保有評価額であれば、恐らく売ることも出来ず、保有評価額600万円となるまで茫然としていた方も多いでしょう。
一部の個人投資家で損切を確定させた人もいますが、下落のスピードと相場の変動幅が読めず、結果的に保有継続を選んだ人が多いと考えられます。
また、現物取引なのでロスカットもない為、割り切って長期保有に切り替えた人も多いでしょう。実際、現物投資での投資家の場合、日中に勤務するサラリーマンだと処分する時間も限られます。
中長期投資での運用はある程度、下落してもいずれ株価は戻るという考え方が必要であり、併せて優良銘柄でも下落局面が来ることを理解しておく必要があります。
そして、残念ながら業績が回復しない場合は塩漬け銘柄へと移行してしまうのです。
中長期で複数銘柄を保有する以上、塩漬け銘柄の発生は避けられませんが、同時に含み益の銘柄も必ず発生します。
そして、含み益を保有している銘柄は空売りでのリスクヘッジを用いることが出来ます。
例を用いて説明します。
4月1日 銘柄A 株価1,000円 単元株数100で現物買入 購入時価格100,000円
5月1日 銘柄A 株価1,200円まで上昇 評価額120,000円 含み益 20,000円
この5月1日時点で保有している20,000円の含み益を維持したいと考えたことはありませんか?
株主優待や配当等、権利確定日までは保有しておきたい状況も考えられますよね。
そうした場合、含み益のある状態で空売りを入れるのです。
先の例で言うと、5月1日に仮に1,200円で空売りを入れることによって、含み益20,000円はキープされた状態を作ることが出来るのです。
もし、株価が下落しても20,000円の利益は確保出来ますので、精神的に大きな安心感が得られます。
そして、空売りポジションの解消タイミングですが、権利確定後でも良いですし、株価が下落を続けていても気にすることなく、自分の資金が必要な時に決済すれば良いのです。
優待クロスと考え方は似ていますが、現物取引と空売りのタイミングがクロス(同時)ではない為、中長期投資を主体とした投資家に向いた手法と言えます。
同時に中長期での投資にとっては、利益を確実なものとする銘柄を作ることで、塩漬け銘柄の解消に向けた計画を立てることも出来るでしょう。
先のリーマンショックや東日本大震災等、有事の場合でも資産防衛に向けて、早めに手を打つことが出来ると手法と言えます。
このように中長期での現物保有銘柄への空売りによる利益確保は大きな安心感と効果があることがお分かり頂けたことでしょう。
一方で、以下の注意点がありますので、しっかりと理解しておきましょう。
理論上のリスクではありますが、上昇を続けた場合、空売りのポジションに対しては損失が膨らんでいることになります。
現物銘柄の評価額が信用取引の担保に入れることが出来るとしても100%ではないでしょうから、最悪の場合、ロスカットが起こり得ることを理解しておきましょう。
下落基調相場でも上がる銘柄はありますので、しっかりと保有銘柄の値動きを注視しておく必要があります。
信用取引の口座を開設している人はご存知の通りですが、流通量の少ない銘柄は制度信用取引が出来ないことがあります。
また、一部の過熱銘柄は東証一部であっても空売りが出来ず、信用取引は買いポジションに限定されることがあります。
とはいえ、全体的には多くの銘柄で空売りは可能と言えますし、事前に自分の保有銘柄が空売り可能か調べておくのも良いでしょう。
空売りにより中長期投資銘柄のリスクヘッジについて説明しました。
安定志向の高い投資家向けの手法であり、権利確定や利回りを計算しながら資金を運用することが出来ます。
経験を積んだ投資家でも、中長期保有銘柄の利確を権利落ち後で確定させる場合に行う手法でもあります。
利益を制限する手法ではありますが、リスクをヘッジする手法としての評価は高いと言えるでしょう。