株の売買発注前に板情報を見ることが多いと思いますが、その際、大量の発注が入ると見せかけて約定しない場合があります。
こうした行為は、実際は約定の意図がないにも関わらず取引が盛況であると見せかける行為で、見せ板、あるいは見せ玉(みせぎょく)と呼ばれます。
取引の活況を装うことで第三者の投資を誘う為、板情報を参考にする個人投資家は釣られがちです。
今回の記事では、見せ板の意味や規制、対処法について解説します。
目次
実際のところ、個人投資家による見せ板は金融商品取引法違反となります。
個人の利益確保の為に、相場を固定化・流動化させることに違法性があると解釈されるようです。
例えば、ある銘柄を1,000円で売り抜けたいとしましょう。そこで999円で大量の買い注文を入れます。
これが見せ板となり、他の投資家が買い注文を入れるとそれより高い価格、1,000円以上で買い注文を入れることになります(成行含め)。
このタイミングで売り抜ける注文を入れることで約定させます。その後、999円の買い注文を取り消すのです。
この例では売り抜けと買い注文のキャンセルがほぼ同時に行われていることから、約定の意思がないと看做され違法性を指摘されることになります。
過去には同法違反での逮捕者も出ており、悪質と判断されたデイトレーダーや会社員が証券取引等監視委員会から告発されています。
特に悪質と判断された例では、2011年に逮捕されたデイトレーダーが罰金300万、追徴金1億8,000万でした。
追徴金徴収ですので、数年間に渡って監視されていた可能性もあります。
とはいえ、逮捕者の数が少ない為、実際は監視機能が完全とは言えないと指摘されています。
個人投資家の逮捕者が出る一方で、機関投資家の逮捕は殆ど聞かれません。
それは機関投資家の見せ板が、その銘柄の流動性を高めていると判断出来るからです。
機関投資家の場合、運用資金量が莫大であり、資金運用することで資金提供者へのリターンが成立する為、緻密な投資計画を立てています。
分散計画、リスク管理、投下資本回転率・利益率等々。
そうなると当然、流動性の高い銘柄はそのまま売買を約定させるだけで良いのですが、小型株等、流動性の低い銘柄の場合、見せ板を出したりするケースがあります。
機関投資家が見せ板を出すことで、売買が活性化され、流動性が確保されると言えます。
もともと、機関投資家は長期保有を前提とした投資が多く、デイトレやスキャルピングとの区別が難しいこともあり、機関投資家の見せ板が摘発されにくいと考えられています。
AIやアルゴリズムを駆使して見せ板が計算されている現在、状況はかなり複雑なのかも知れません。
実際の取引で見せ板を見つけることがありますが、その時はどのように対処すれば良いでしょうか。
ある意味、見せ板の注文は、この価格より下げさせない(上げさせない)という機関投資家からの意思表示でもあります。
こうした見せ板行為を蓋と言います。
板の各価格帯の発注量が1,000株前後だとして、ある価格の発注量が100,000株だとすると株価は需給が合わず、動かず、蓋をされている状態です。
もちろん、全てが見せ板ではありませんが、見分けることは可能です。
見せ板の場合、約定されては困る為、実際にその価格が近づくと取り消しされて、板から消えるか、相場に合わせて下げたり(上げたり)します。
そして、蓋への対処として、以下のケースを考えてみます。
ある銘柄で現在取引価格1,000円の板情報を見ると、995円で蓋と考えられる大量の買い注文が入っていました。
一つ目の対処ですが、多くの投資家はこの銘柄の板情報を見て、995円以下に下落しないと判断しますので、996円以上で買いを入れます。
リスクが低く安心な材料を得て買いを入れますが、仮に下落しても995円までしか下がらないと判断するのです。
そして、株価上昇に乗ることで利益を確保するのです。
もちろん、蓋はダミーですので約定せず、株価の上昇は一時的、限定的であることを想定しておく必要があります。
二つ目の対処ですが、板を見ていて、995円近くになっても大量の買い注文が残っていれば、見せ板ではなく、約定の意思のある注文と判断し、買い注文を入れるのです。
この場合、995円より上の価格で買いを約定させますが、大口の995円が約定すると大きく上昇することになります。
このように蓋の流れに乗ることで、利益確保に動くことが可能になります。
ポイントは蓋の見分けですが、前者であれば短時間での利確、後者であれば中長期ホールドも視野に入れて運用まで可能になります。
個人投資家による見せ板は違法であり、やはり大口機関投資家の見せ板について注文を入れる方が安全でしょう。
見せ板か実際の注文かを見分ける為には、常にモニターを見ておく必要がありますので、多くの銘柄で対応することは出来ません。
そういう意味では、デイトレーダーでも複数銘柄での取引は難しく、特定の銘柄で行われる取引と言えるでしょう。