優待クロスは「現物買い」と「信用売り」によって行なう取引方法です。信用取引には「一般信用」と「制度信用」がありますが、優待クロスでは一般信用を選択べきです。では、なぜ一般信用を選ぶべきなのでしょうか?
目次
優待クロスの売りを一般信用取引でする理由は「逆日歩」を防げるからです。
制度信用取引ですと逆日歩というコストが発生し、得られる株主優待よりもコストのほうが大きくなってしまうことがあるのです。
逆日歩とは制度信用取引において売り手が支払うコストです。信用取引では株を証券会社から借りることになりますが、証券会社が貸し出せる株数には上限があります。上限に達した場合、証券会社は別の場所から株を借りてきます。このときにコストが発生しますが、それは空売りしている投資家が負担しないといけないのです。
ただし、逆日歩があるのは制度信用取引だけです。
一般信用取引は証券会社だけで完結する取引方法ですので、他所に借りることはしません。貸し出せる株が無くなったら空売りはできなくなります。よって、逆日歩は発生しないのです。
逆日歩がいくらかは銘柄によって違うので一概には言えません。ただし、計算方法は「1株あたりの逆日歩×保有株数×建玉の保有日数」となります。例えば、以下のケースで計算してみましょう。
上記の場合、「7銭×2,000円×10日=14,000円」となり、14,000円の逆日歩を支払わないといけません。逆日歩はこのように計算します。ただし、1株あたりの逆日歩は日々変化することもあるため、実際の計算式はもっと複雑です。
一般信用取引での優待クロスなら逆日歩が防げるという大きなメリットがあります。
しかし、「在庫切れ」というデメリットがあることも知っておかないといけません。
先にお伝えしたように、一般信用取引は顧客と証券会社だけで完結する取引です。よって、証券会社が保有している株が不足したとしても他所に借りるようなことはしないのです。在庫切れになったらそこでお終いであり、空売りができなくなります。そして人気銘柄ほど在庫切れになりやすいです。
とくに株主優待を得られる権利が獲得できる最終日である「権利付最終日」に近づくほど、人気銘柄の在庫は無くなりやすいです。このため、在庫が問題ないかを確認しておかないといけません。
信用取引の在庫は証券会社のツールで確認可能です。「信用残」や「信用買い残・売り残」などと記載されている部分があるかと思いますが、そこの「売り枚数」や「売り残数」などが在庫数となります。
優待クロスを一般信用でするときにはかかかるコストがあります。
コストは大きなものではありませんが、知らないと「予想以上のコストが発生してしまった・・・」と後悔することもあるので確認しておきましょう。
優待クロスを一般信用でするときのコスト
詳細は次章をご確認ください。
売買手数料は「新規売り」と「決済買い」のときに発生する手数料です。
例えば、「楽天証券」では以下の手数料が発生します。
売買金額 | 売買手数料 |
---|---|
10万円以下 | 99円 |
10万円超~20万円以下 | 148円 |
20万円超~50万円以下 | 198円 |
50万円超 | 385円 |
売買金額が15万円であれば、「10万円超~20万円以下」の売買手数料が当てはまりますので片道148円です。よって、「148円(新規売り)+148円(決済買い)=296円」となり、往復296円の売買手数料が発生します。
売買手数料を抑えるには手数料率が安い会社を選ぶことです。
また、定額プランを利用するのもおすすめです。例えば、楽天証券ですと「1日の売買代金が100万円以下であれば売買手数料は無料」になります。こうしたプランがある会社は結構ありますので、それらを利用するのも手です。
貸株料とは空売りするときに証券会社に支払うレンタル料です。
空売りは証券会社から株を借りる取引方法であるため、レンタル料が発生します。
例えば、松井証券の一般信用取引では「年2.0%」の貸株料が発生します。仮に約定代金が10万円で保有日数が5日だったとしましょう。貸株料は「約定代金×貸株料利率÷365×保有日数」と計算するため、「10万円×2.0%÷365×5日=27円」となり、27円の貸株料が発生します。
貸株料を抑えるには「貸株料利率の低い会社を選ぶ」・「保有日数を短くする」の2つです。
貸株料利率が低い会社ほど貸株料は抑えやすくなります。また、保有日数が短いほど貸株料が減りますので、なるべく期限ギリギリで優待クロスをするようにしたいです。
配当落調整金とは配当相当額を調整するためのお金です。
配当のある銘柄の場合、配当を得られる権利を獲得できる最終日の翌日に配当分だけ株価が下落します。その下落分を調整するためのお金が配当落調整金なのです。
空売りしている人の場合、配当落調整金を支払わないといけません。支払額は一般信用取引ですと配当金の100%です。配当金が6,000円でるなら6,000円を支払う必要があります。
ただし、6,000円を全額支払うわけではありません。優待クロスは現物買いもしているため、配当金が得られます。その配当金によって配当落調整金は相殺されるからです。
配当金が6,000円の場合、手元に入ってくる配当金は「6,000円×84.685%=約5,081円」です。この配当金から配当落調整金を差引きますので「約5,081円-6,000円=-約919円」となり、実際に支払うのは約919円です。
配当落調整金を抑える方法は残念ながらありません。優待クロスをする以上、配当落調整金は必ず発生するからです。このため、必要なコストとして受け入れるしかないのです。
優待クロスを一般信用で行なうときには注意点があります。それは次の5つです。
一般信用での優待クロスはこの5つに注意!
上記を知っておかないと株主優待がきちんと受取れなかったり、余計なコストが発生してしまったりするので次章で詳細を確認しておいてください。
注文は必ず「権利付最終日」の寄り付き前にするようにしなくてはいけません。
そうしないと買いと売りを同じ株価で約定させるのが難しいからです。
権利付最終日とは、株主優待を受取れる権利が獲得できる最終日です。優待クロスをする際は権利付最終日の寄り付き前に注文するのが基本なのです。権利付最終日が7日であれば、7日の株式市場が始まる前に注文を出しておくということです。
寄り付き後ですと買いと売りを同じ株価で約定させるのが困難になります。買いと売りを同じ株価で約定できないと、優待クロスの旨みである損益の相殺ができません。場合によっては損失が発生し、その損が受取る株主優待よりも大きくなってしまうケースもあります。
株を購入したら、権利付最終日の取引終了まで保有するのも必須条件です。
株主優待を受取れる権利を獲得できるのは権利付最終日の取引終了まで保有するのが条件だからです。
例えば、3日が権利付最終日であれば、3日の株式市場が終了するまで購入した株を保有する必要があります。そうでないと株主優待を得ることができないので注意してください。
一般信用取引での優待クロスは在庫切れがあるので注意です。
在庫切れになるとそれ以上の取引はできなくなり、購入が不可能になります。人気の銘柄は権利付最終日が近づくと在庫切れしやくなるため、残りの株数をチェックしておきましょう。
優待クロスでは配当金が得られません。
実際は得られるのですが、配当落調整金によって相殺されてしまいます。このため、配当金を目当てに優待クロスすることはできないので気をつけてください。
できる限り権利付最終日付近に注文するようにしたいです。
優待クロスは空売りをしますので貸株料が発生するからです。貸株料は保有日数が長いほど大きくなります。このため、保有日数を抑えるために権利付最終日付近に注文したいのです。ただし、在庫切れには注意しましょう。
優待クロスの売りを一般信用取引で行なえば逆日歩を防ぐことができます。
逆日歩は場合によってはかなりの負担になるため、優待クロスのときに一番注意しないといけないコストです。それを防止できるのが一般信用取引になります。
なお、一般信用取引は在庫切れになる可能性があるというデメリットがあります。在庫切れになるとその銘柄は一般信用での取引できなくなるため、在庫に問題ないか注意しておく必要があります。
また、優待クロスでは「売買手数料」・「貸株料」・「配当落調整金」といったコストも発生します。そうしたコストを確認した上で、「コスト<株主優待」となるようにしなくてはいけません。