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権利確定日の前に空売りしたら儲かる?配当権利落ちの仕組みについて解説

権利確定日を過ぎると株価は下落する傾向があります。そこで「権利確定日の前に空売りをすることで儲けられるのでは?」と考えたことがある投資家もいるのではないでしょうか。

しかし実際には権利落ちの仕組みや手数料が課題となり、儲けることは難しいです。今回はそんな権利落ち日と空売りの関係性、権利落ちの仕組みについて解説します。

目次

権利確定日の前に空売りをするとは

権利確定日の前に空売りをする仕組みを理解するうえで大切なのが、用語の理解と配当に関する知識です。ここからは信用取引についての前提知識、配当権利落ちの仕組みと権利落ち日前後の株価、配当権利落ち調整金の中身の解説をしていきます。

信用取引についての前提知識

信用取引とは期間を決めて保証金以上の金額の株式を借りることで、大きな利益を出すことができる投資手法です。

空売りは信用取引の手法の一つで、株価が下がりそうな株をあらかじめ売却して、実際に下がったタイミングで買い戻します。するとその差額が空売りによる利益となるのです。

また信用取引には制度信用取引一般信用取引の2種類があります。

制度信用取引とは金融商品取引所が選出した銘柄の取引のことです。
一方で一般信用取引は証券会社が独自に選出した銘柄の取引のことです。取引量が少ないため、自由に取引できるとは限りません

配当権利落ちの仕組みと前後の値動き

配当権利落ちとは「配当金が受け取れる権利を失うこと」を言います。

そもそも配当金は権利確定日時点において株式名簿に記載されている株主に対して支払われるものです。一般的に権利確定日の2営業日前が「権利付け最終日」1営業日前が「権利落ち日」とされています。

権利落ち日の後は株価が下がりやすい傾向があるため、空売りで儲けられる可能性があると考えられます。理由は、投資家が配当金をもらう権利を目的とした購入が進んで起きていた、一時的な需要増加が沈静化されるためです。

引用:TradingView「花王株価」

上記は国内の高配当銘柄花王の株価を日足表示したものです。ここでも実際に配当権利落ち日の直後に株価が下がっていることが確認できます。この傾向を利用すれば配当権利落ち日前に空売りすることで、利益が出るのではないかと投資家の多くが考えるのです。

配当落ち調整金とは

空売りなどの信用取引を行うとき、実際には株主はほかにいるため投資家に対して配当金が入ってきません。そこで空売りのために持ち株を貸している株主は、証券会社に受け取った配当金相当の金額を支払います。

一方で空売りを行っている買い方は、証券会社からその配当金相当の金額を受け取る権利があります。このときの金銭が配当落ち調整金です。

ここでの収入は税法上の配当所得ではなく、令和3年時点では15.315%の税率が課せられます。また一般信用取引での空売りを行うときには配当金がそのまま配当落ち調整金とされます。

権利確定日の前に空売りすると儲かる?

権利確定日前後の値動きの特徴と配当落ち調整金の仕組みを理解したうえで、権利確定日の前に空売りをする行為は儲かるのかどうか検証していきます。結論から言うと権利確定日の前に空売りしても基本的には儲かりません。

どうやらそこまで簡単な仕組みではないようですね。

特に空売りに関しての知識や経験の浅い投資家は、経済状況を把握して、愚直にタイミングを計った現物取引をすることをおすすめします。

一方で権利確定日の前に空売りをして儲かる投資家も確かに存在します。しかし彼らはリスクマネジメントをとったうえで、大きなギャンブルに勝っているにすぎません。勝者は一握りの存在に過ぎないということを覚えておきましょう。

権利確定日の前に空売りをしても儲からないとされる要因

先述の通り権利確定日の前に空売りをしても基本的には儲かりません。

その理由は株価が権利確定日後に必ず下がるとは限らないこと、権利落ち調整金の影響、空売りによる手数料負けのリスクがあります。ここからはそれぞれの詳細について詳しく解説していきます。

株価が下がらないこともある

まず大前提として権利確定日前後で株価の下落があるとは限りません。基本的にこの値動きを起こしているのは、配当金を受ける権利を手に入れるために取引する投資家です。

しかしその力は比較的弱く、新型コロナウイルスの世界的感染拡大やロシアとウクライナの戦争などの経済的、政治的動向に左右されることのほうが往々にしてあります。

権利確定日前後で株価が下がらないことがあるということを踏まえて、リスク計算をする必要があるでしょう。

権利落ち調整金の影響

権利確定日の前に空売りを行うことで、配当金相当額を儲けられるように感じますが、実際は権利落ち調整金が差し引かれてしまいます。

結果として配当権利日の前後での価格差分が、権利落ち調整金とほとんど同等の額になることが考えられています。このような仕組みで株価との整合性をとっているのです。

空売りによる手数料負けのリスク

そもそも空売りは現物取引よりもリスクがある投資手法です。

個人投資家が空売りを行うときには証券会社に株を借りる必要があるため、貸株手数料が発生します。

また制度信用取引で空売りをする投資家が増えて株の流通量が減っていくと、証券会社が大株主から不足している株を調達しますが、ここで空売りをする個人投資家に発生するのが逆日歩です。

特に逆日歩はその日の取引が終了しないと一株当たりの費用がわからないため、思いもよらず高額となることも考えられます。

このような空売り特有のコストに負けてしまうと、利益を出すことは難しく逆に手数料負けしてしまうリスクさえあるでしょう。

簡単に儲かる投資はなかなかない

権利確定日を過ぎると株価は下落する傾向があります。そこで多くの投資家が権利確定日の前に空売りをして儲けようと考えるわけです。

しかし実際には権利落ちの仕組みや信用取引手数料、流動性の問題が主な要因となり、儲けを出すことは難しいです。また、配当権利落ち日の前後の値動きは、経済の動向や時流の変化による値動きよりも弱くて小規模なものが多い傾向があります。

そのため愚直にファンダメンタル分析やテクニカル分析を行って、空売りのエントリーのタイミングを見図ることをおすすめします。最後までご覧いただきありがとうございました。

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