「空売り比率」と聞くと、東京証券取引所が公開している空売り比率を思い浮かべる投資家も多いでしょう。しかし、実際に投資家が知りたいのは、個別銘柄の空売り比率なのではないでしょうか?今回の記事では、国内大手ネット証券会社であるSBI証券と楽天証券で、個別銘柄の空売り比率を出す方法は本当にないのかについて検証していきます。
目次
空売り比率とは、その日に行われた取引代金に占める空売り注文の代金の割合のことを言います。
計算式で表すと、以下の通りです。
空売り比率(%)=信用売り(空売り)金額÷売り注文の合計金額×100
例えば、ある営業日における株式の出来高が100万円であり、このうち空売り注文による取引の代金が25万円分であった場合、空売り比率は25万円÷100万円×100=25%となります。
一般的に空売り比率は、20%~30%の間を推移する傾向があると言われています。しかし、近年の空売り規制の緩和に伴い、空売り比率の基準値は40%付近まで高まっているのです。長期的な空売り比率の推移をみるときには、この上昇傾向を掴んでおくことが効果的な分析につながるでしょう。
空売り比率のチャートをテクニカル指標として用いるためには、実際の株価のチャートと同時に表示させる必要があります。
実は、日経平均株価と空売り比率を同時に表示させる方法はいくつかあります。最も簡単な方法は、まとめサイトのリアルタイム表示を使う方法です。
日経平均株価は、日本で最も大きな株価指標です。そのため、東京証券取引所が公表する空売り比率との同時比較ができるチャートがネット上に転がっています。
結論から言うと、個別銘柄について空売り比率を出す方法はありません。
理由は、空売り比率があくまで市場全体についての当日の傾向を掴むためのものであり、個別銘柄についての指標ではないためです。結果として、当然チャート表示もできません。
個別銘柄について、空売り比率は出せないとしても、空売り残高比率が参考になる場合があります。空売り残高比率とは、空売り比率と同様にパーセンテージで数値化されるものです。計算式は以下の通りです。
空売り残高比率(%)=信用売残÷売買高×100
ここで、各営業日ごとの空売り残高比率を結んで、チャートとして分析することができるのではないかと考える投資家も多いでしょう。ここからは、国内大手ネット証券会社であるSBI証券と楽天証券で、日本株個別銘柄の空売り残高比率のチャートを出す方法があるのかについて検証していきます。
まずは、国内大手ネット証券の代表格であるSBI証券についてです。SBI証券のデスクトップ版では、ログイン後に「国内株式」→調べたい銘柄名またはコードを入力→「株価」→「情報表示」の「詳細」をクリックします。
すると、以下のような表示画面が現れます。ここから信用売残を確認することができます。
SBI証券では、このように確認できた信用売残と当日の出来高を使って、空売り残高比率を算出することができます。例えば、2022年5月3日時点におけるソフトバンクの空売り残高比率は、以下のようになります。
200,500(信用売残)÷6,974,600(出来高)×100=2.87…%
今回の銘柄は空売り残高比率が低いため、買戻しやの圧力が弱く、価格上昇の要因となる可能性は低いと言えます。
今回の検証では、SBI証券において公式デスクトップサイトでの空売り残高比率の算出は可能である一方で、空売り残高比率の算出を自動化してくれるツールや、空売り残高比率のチャートを表示させることはできませんでした。信用売残の前日からの動きを参考に、取引を行いましょう。
続いて、国内大手インターネット企業楽天が運営する楽天証券の場合を検証していきます。楽天証券では、ログイン後に「国内株式」→調べたい銘柄名またはコードを入力→「検索」をクリックします。
銘柄ごとの表示ページをそのまま下にスクロールしていきます。すると、以下のように「信用残」に「信用売」という項目が表示されます。
あとは、信用売に表示されている株数と出来高に表示されている株数を使って、空売り残高比率を算出することができます。楽天証券では、信用売残の確認はすることができるものの、空売り残高比率の算出を自動化してくれるツールや、空売り残高比率のチャートを表示させることはできないようです。つまり、SBI証券と同様の結果であると言えそうです。
空売り比率とは、その日に行われた取引代金に占める空売り注文の代金の割合のことを言います。市場全体の状況を把握するのに効果的な指標ですが、個別銘柄について空売り比率を出す方法はありません。
しかし、国内大手ネット証券会社であるSBI証券と楽天証券では、公式デスクトップサイトで個別銘柄の信用売残と出来高を表示しています。投資初心者での、この2つの表示データから、空売り残高比率を算出することができます。そのため、テクニカル指標として空売り残高比率やその変動を投資判断の材料として使うことで、今後の市場の動向やトレンドをいち早くつかむことが可能でしょう。あなたも是非、個別銘柄への投資には空売り残高比率を使ってみてはいかがでしょうか。最後までご覧いただきありがとうございました。