移動平均線から株価がどの程度乖離しているかを示すのが、「乖離率」です。
そんな乖離率を指標として投資をする手法もありますが、その手法と注意点について、解説していきましょう。
目次
乖離率をご説明する前に、まずは移動平均線についてご説明しておきます。
上の画像内で、緑の線が5日移動平均線、紫が25日移動平均線、赤が50日移動平均線です。
これは、過去一定期間の株価の平均値を連続して計算しグラフ化したもので、中・長期的なトレンドを示しています。
そしてこれと株価を照らし合わせることで、株価のトレンドや転換点などを分析するのに利用されるのです。
期間の取り方は、日足ではこの3種の他に75日、週足では13週や26週、月足では12カ月や24カ月などがよく用いられます。
なお、今回はもっとも一般的で本質的な「単純移動平均線」を示していますが、直近の株価を重視して特別な計算をして加工した「加重移動平均線」などもあります。
それでは乖離率ですが、これは正式には「移動平均乖離率」であり、株価が移動平均線からどれくらい離れているかを見る指標です。
移動平均線は過去一定期間の株価の平均値を連続して計算したものですので、そこから株価があまりにも乖離した場合に、再び近づくことが予想できます。
したがって一般的に、5日移動平均線で乖離率が10%を超えた時、25日移動平均線で15~20%を超えた時に、再び移動平均線に近づこうとするといわれています。
乖離率を指標として、以下のように個別銘柄をスクリーニングすることも可能です。
画像2の条件でスクリーニングできたある銘柄のチャートが、画像3です。
株価が見事に、移動平均線から離れているのがわかります。
また逆に、移動平均線を下回って大きく乖離している銘柄も、注目に値します。
画像4のようにマイナス方向への乖離を条件としてスクリーニングできたある銘柄のチャートが、画像5です。
こちらも株価が移動平均線から離れているのが明らかです。
これだけの乖離を見ると、確かにこれらの銘柄の株価が上昇や下落を続けるよりは、再び移動平均線に近づいていくことが予想されるのも、うなずけるのではないでしょうか。
株価というのは基本的に、その企業の業績に応じて変動します。良い会社の株は値が上がるのです。
しかしながら、短期的には単なる偶然としか思えない変動も見せます。
また、業績発表やニュースなどの何らかの情報により、過剰に上がったり下がったりもします。
ですから株価が移動平均線からあまりにも離れた場合、そんな偶然や過剰評価を修正するかのように再び移動平均線に近づくことが予想されます。
そもそも上がりっぱなし、下がりっぱなしというのはあり得ないのですから、それも当然なのかもしれません。
ですから、乖離率が大きくマイナスになった場合は「上がる」、逆に大きくプラスになった場合は「下がる」サインだといわれています。
前者の場合は普通に買えばよいですし、後者の場合は空売りで利益を狙ってもよいでしょう。
ただし注意しておきたいのが、乖離率だけを指標に売買するのは危険だということです。
たとえば、
人々の生活様式が変わってその会社の将来性に期待ができなくなった
↓
それを示すかのように業績悪化
↓
売りが売りを呼び株価急下落で乖離率が大きくマイナス
のように、長期的にも株価が下落していきそうな局面では、いくら乖離率が大きくなろうとも、再び株価が移動平均線に近づくことは難しいかもしれません。
乖離率はあくまで指標の1つです。乖離率が大きくなったからといって、その後の株価が必ずしも移動平均線に近づいてくるとは限りません。
そして長期的に見て上昇や下落を続けそうな場合などは特に、それだけを指標とするのは危険でしょう。
株式投資には、多面的な観点が必要なのです。
過去一定期間の株価の平均値を連続して計算しグラフ化し、中長期的なトレンドを示すのが移動平均線です。
そして株価が移動平均線からどの程度離れているかを示すのが、「(移動平均)乖離率」です。
一般的に、5日移動平均線で乖離率が10%を超えた時、25日移動平均線で15~20%を超えた時に、再び移動平均線に近づこうとするといわれているので、その後の株価予想の指標の1つとなります。
しかし、乖離率が大きくなってからといって、必ずしも移動平均線に近づいてくるとは限りません。また、長期的に見て上昇や下落を続けそうな場合などは特に、それだけを指標とするのは危険でしょう。
株式投資には、多面的な観点が必要なのです。