この記事では「空売りするときの手数料と計算方法」をお伝えしています。また、空売り時には手数料以外のコストもあります。その点にも触れ、対策方法も解説していますので手数料負けを防げるようになります。
目次
空売り時に発生するおもな手数料は「売買手数料」です。売買手数料とはその名のとおり、売りと買いをするときの手数料で以下の2つになります。
空売り時の売買手数料はこの2つ
例えば、SBI証券の「スタンダードプラン」の空売り手数料は次のとおりです。
取引額 | 手数料 |
---|---|
~10万円 | 99円(税込) |
10万円超~20万円 | 148円(税込) |
20万円超~50万円 | 198円(税込) |
50万円超 | 350円(税込) |
取引額が30万円なら「20万円超~50万円」のケースが妥当し、手数料は198円です。よって、30万円の取引を10回したとすれば「198円×10=1,980円」となり、1,980円の手数料が発生します。このように売買手数料は「各社の定める手数料×取引回数」で計算します。
この売買手数料に対する対策は次の3つです。
詳しくは次章よりご確認ください。
売買手数料は各社によって異なるため、安い証券会社を選ぶことで抑えることが可能です。
取引額 | DMM株(一般コース) | SBI証券(スタンドードプラン) | 楽天証券(超割コース) |
---|---|---|---|
~10万円 | 88円(税込) | 99円(税込) | 99円(税込) |
10万円超~20万円 | 88円(税込) | 148円(税込) | 148円(税込) |
20万円超~50万円 | 88円(税込) | 198円(税込) | 198円(税込) |
50万円超 | 88円(税込) 300万超からは0円 | 350円(税込) | 385円(税込) |
例えば、50万円の取引の手数料はDMM株で88円、他の2社は198円です。30回した場合ですとDMM株は2,640円ですが他の2社は5,940円となり、3,300円も差が付きます。このように手数料の安い会社を選べばコストを抑えることができるのです。
証券会社の定額プランを利用するという手もあります。証券会社によっては「1日○○円まで手数料無料」というプランを用意していることがあるからです。
SBI証券(アクティブプラン)
1日の取引金額 | 手数料 |
---|---|
~100万円 | 無料 |
100万円超~200万円 | 880円(税込) |
以降100万円増加ごとに | 440円(税込)ずつ増加 |
楽天証券(いちにち定額コース)
1日の取引金額 | 手数料 |
---|---|
~100万円 | 無料 |
100万円超~200万円 | 2,200円(税込) |
200万円超~300万円以下 | 3,300円(税込) |
以降、100万円増えるごとに | 1,100円(税込)を追加 |
上記2つのプランであれば1日の取引金額が100万円までなら何度取引しても売買手数料は無料です。こうしたプランを利用して売買手数料を抑えるのもおすすめになります。
無駄なトレードをしないというのも大事です。売買手数料はトレード回数が多くなるほど高額になるからです。
売買手数料はトレードする度に加算されていきます。従ってトレード回数が多いほど高額になってしまうのです。そのため、トレードする回数は必要最小限に抑えたいです。チャンスが来るまでじっと待ち、無駄なトレードをしないようにする必要があります。
H2 空売りするときは売買手数料以外にもコストが発生する
空売りするときは売買手数料以外にもコストが発生します。それはおもに次の2つです。
空売り時に売買手数料以外に発生するコスト
上記2つは売買手数料よりも大きくなるケースもありますので、次章でしっかり詳細と対策を確認しておいてください。
銘柄によっては「逆日歩(ぎゃくひぶ)」が発生します。逆日歩とは証券会社に株不足が発生したときに必要となるコストです。
空売りは証券会社から株を借りる取引方法ですが、証券会社が貸し出せる株数には上限があります。証券会社は貸し出せる株数が不足した場合、他から借りてきます。そのとき借賃が発生していますがこれは投資家が負担しなくてはいけません。その費用を逆日歩と呼ぶのです。
逆日歩の計算方法は「1株あたりの逆日歩×保有株数×建玉の保有日数」になります。例えば、1株あたりの逆日歩が3銭で1,000株を15日保有すると次のように計算します。
0.3×1,000×15=4,500円
上記のケースでは4,500円の逆日歩が発生しています。このため、4,500円を支払わないといけません。
逆日歩への対策は「一般信用取引」です。逆日歩は「制度信用取引」だけに適用されるものであり、一般信用取引では発生しないからです。
一般信用取引は証券取引所のルールに基づいた信用取引であり、制度信用取引は証券会社のルールに基づいた信用取引です。この内、逆日歩が発生するのは制度信用取引のみです。一般信用取引では適用外なので発生しません。このため、一般信用取引なら逆日歩を回避できます。
空売りには「貸株料(かしかぶりょう)」というコストもあります。貸株料とは株の保有日数によってかかる費用です。
貸株料の計算方法は「約定代金×貸株料利率÷365×保有日数」です。約定代金80万円のときに貸株料利率が年1.50%、保有日数が100日なら次のようになります。
80万円×1.50%÷365×100日=約3,287円
上記のケースでは約3,287円の貸株料が発生していますので約3,287円を支払わないといけません。
貸株料の対策への対策は「保有日数を短くする」・「貸株料利率の低い会社を選ぶ」の2つです。
まずは保有日数についてです。貸株料は保有日数が長くなるほど高額になります。よって、保有日数を短くすることで金額を少なくすることが可能です。
次に貸株料利率についてです。貸株料利率は証券会社によって違います。このため、貸株料利率が低い会社を選ぶことで貸株料を軽減できるのです。
SBI証券 | 楽天証券 | auカブコム証券 | |
---|---|---|---|
制度信用取引 | 年1.10% | 年1.10% | 年1.15% |
一般信用取引 | 年1.10%(無制限)年3.90%(短期) | 年1.10%(無制限)年3.90%(短期) 0%(いちにち信用) | 年0.62%~年1.50%(長期) 1注文あたり約定金額100万円以上 0%(デイトレ) 1注文あたり約定金額100万円未満 年1.80%(デイトレ) |
「権利付最終日」をまたいで空売りすると、「配当調整金」の支払が必要になると知っておくことも重要です。配当調整金の金額によっては空売りの利益が無くなってしまうことがあるからです。
まず、権利付最終日とは配当金と株主優待が受取れる権利を得られる最終日のことです。よって、「配当金や株主優待が欲しいならこの日までに当社の株を保有してください」というものになります。6日が権利付最終日なら6日までにその銘柄を保有するということです。
次に配当調整金とは、証券会社の信用取引銘柄に配当金が出たとき配当分の金額を売り手から徴収して買い手に支払う調整金です。
信用取引である空売りは権利付最終日をまたいで保有していると、配当調整金がコストとして追加されるのです。詳しい条件と金額は次章をご確認ください。
配当調整金が必要なケースは次の条件に当てはまるときです。
配当調整金が必要になるケース
配当金のある銘柄を「権利付最終日」までに空売りし、その銘柄を権利付最終日にまたいで保有すると配当調整金の支払が必要です。
例えば、権利付最終日が6月10日だとだします。6月10日までに空売りし、その銘柄を6月10日の株式市場が終了するまで保有していると配当調整金の支払条件に当てはまります。
H3 配当調整金の金額
配当調整金の金額は制度信用取引と一般信用取引によって異なり、次のようになっています。
信用取引の種類 | 支払う配当調整金 |
---|---|
制度信用取引 | 配当金×84.685% |
一般信用取引 | 配当金の100% |
1万円の配当金がでるとします。制度信用取引は「1万円×84.685%=約8,468円」となり、支払う配当調整金は約8,468円です。一般信用取引は配当金の100%ですので1万円の配当調整金を支払うことになります。
配当調整金の対策方法は「権利付最終日までにポジションを決済する」ことです。そうすれば、配当調整金は発生しません。例えば、20日が権利付最終日なら19日まであるいは20日の株式市場が開催中までにポジションを決済します。
空売り時に発生すると手数料とコストをまとめると以下のとおりです。
手数料やコストの種類 | 対策方法 |
---|---|
売買手数料(新規売りの手数料・決済買いの手数料) | 手数料の安い証券会社を選ぶ 証券会社の定額プランを利用する 無駄なトレードをしない |
逆日歩 | 一般信用取引で空売りする |
貸株料 | 保有日数を短くする 貸株料利率の低い会社を選ぶ |
配当調整金 | 権利付最終日までにポジションを決済する |
空売り時の手数料とコストはおもに上記の4つですので、これらに対策しておけば手数料負けを防げる可能性が上がります。対策方法を参考にしてぜひ実効してみてください。