株式投資の基本は取引する銘柄を買っておき、株価が高くなったら売ることで利益を増やしていくことです。当たり前のようですが、これから株価が上がる銘柄をいち早く見つけ出すことは、熟練した投資家でも至難の業です。
株主の信用が厚く事業実績もあり、株主への配当も手厚い優良企業は既に株価が高くなっていることが多いです。ではどの銘柄を購入すればいいのでしょうか、様々な投資手法がありますが、その内の一つとして割安株や成長株を見つけ出して購入することも一つの手法として挙げられます。
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割安株とは企業価値が高いにもかかわらず正当に評価されていない、株価が低い銘柄のことをいいます。株価はその企業に対する評価を表すものですが、必ずしも企業の価値を正確に反映しているわけではありません。いくらその企業が安定した収益を上げ、強い競争力を持っていても、ただ認知度が低いというだけで過小評価されていることも多々あります。その逆に、勢いのある企業に対して投資家が大きな期待を寄せ、それが過大評価につながっていることもあります。では株価が低い銘柄の中から、どうやって企業価値の高い銘柄を抽出すればいいのでしょうか考えてみましょう。
株価が、将来を見据えた企業価値を正確に反映しているかどうかを見極めることができる指標が「PER(株価収益率)」と「PBR(株価純資産倍率)」になります。PERは、株価を1株利益で割って求め、株価が会社の利益の何倍まで買われているかを表しています。その値が低いほど、実態と比べて株価が割安と判断ができる指標になります。PERは一般的に15倍以下だと特に割安と考えられています。
例えば、A社の株価は5,000円で、1株利益が500円ならば、PERは10倍。現在の株価は、10年分の利益に相当します。同じ株価でも、1株利益が250円のB社は、PER20倍になり利益の回収に20年かかることになります。この両社を比べれば投資金額の5,000円が10年で回収できるA社の株のほうが、B社より割安と考えられます。
一方で、PBRは株価を1株純資産で割ったものになります。例えばA社の株価が5,000円で1株あたりの純資産が5,000円だとすると、PBRは1倍。同じ株価で1株あたりの純資産が2,500円のB社は、PBR2倍になります。このようにPBRが1倍と2倍の銘柄がある場合に、より割安なのはPBRが1倍の銘柄になります。PBRは低ければ低いほど、割安だといえます。特に1倍以下だと割安ですが、理論上、黒字の場合にPBRが1倍を下回ることはないと言われおり、1.0倍から1.5倍以下のときに割安だと判断されることが多いようです。
PERとPBRは、業種平均と比較することも重要な事項です。たとえば、製造業などの業績は、為替や原油価格、金融政策などの外部環境に大きく左右されやすく、内需企業である小売業、食品、医療品などはある程度の業績が見通せます。業種が違えば、利益の条件がそれぞれ違うため、株価の割安度も変わるので注意が必要になります。
業種平均と比べることに加えて、割安度を見るときに注意しなければいけないポイントがあります。それは、株価が割安なだけでは、株価が上昇するとは限らないということです。成長性が低いなどの問題があって注目されず、割安に放置されている「万年割安株」もあるからです。
割安株が上昇するには、利益が成長するかどうかも必要な条件になります。逆に今が割高でも、3期先の利益が大きく成長していれば、将来の1株利益で算出したPERは割安になるからです。企業が構造改革を実行したり、成長分野に資金や人材を集中しているかをチェックし、利益の成長性も重視することで成長株を見つけることができます。
割安株の株価が上昇するために必要な「利益の成長力」は、本業の利益を示す営業利益が売上高に対してどれだけ占めるかを示す「営業利益率」になります。(営業利益÷売上高で算出)。この数値が高いほど競争力が強いと判断でき、成長を維持できる企業となります。
営業利益率の平均は、製造業が8.5%、内需系が10%。利益率が10%超なら、製造業はPER20倍以下、内需系は30倍以下が通常合格ラインと言われています。割安成長株に投資をしてみようかと思っている投資家は、知っておきたい内容です。
株式投資の代表的な運用スタイルに、「割安株投資」と「成長株投資」があります。それぞれの違いは「割安株投資」では企業価値に比べて割安に放置されている銘柄に投資することをいいます。一方、「成長株投資」は成長力がある銘柄に投資するスタイルです。何れの投資も人気のある投資手法ですが可能であれば両方を兼ね揃えた銘柄を探すことができれば投資対象として魅力的だと思いませんか。
そのためには割安株と成長株の両方の数値を満足した銘柄を抽出することになります。そこで、割安成長株を見つけるためには今までにご紹介した数値の他、EPS(1株あたり当期純利益)にも注目する必要がでてきます。EPSは1株あたりどれだけの利益が出ているかを示しています。
このEPSは投資年度だけを見ては意味がなく、経年変化を見ていく必要があります。現在から中長期間、順調にEPSが増加している企業は、安定的に収益をあげている企業なので、投資先として魅力的な銘柄ということになります。そうした割安・成長株を見つけるには四季報などを用いて経年変化を容易に確認できるため安定的に収益をあげている企業を探し出すことができます。
しかし、四季報には膨大なデータが存在しているためこうした割安・成長株を探し出すためには過大な労力が必要になります。最近ではAIを活用したスクリーニングサービスなどもあり、そうしたスクリーニングサービスを用いることで比較的容易に割安・成長株を見つけ出せるようになってきています。
投資をする目的は色々あると思いますが、資産を増やしたいという気持ちで始める投資家がほとんどだと思います。そのためには、自分が買った株価以上の株価になる銘柄に投資をする必要があります。しかし、どの銘柄が高くなるか分からないため投資家の皆さんは銘柄選びに苦労をしているのが現状です。そうした状況の中で上記でご紹介させていただいた様々な数値を駆使して割安・成長株を抽出し投資することで購入銘柄が中長期的に上がる確率をグンと高められるのではないでしょうか。