株式投資においてストップ高(安)を経験した人は多くいることでしょう。
実は今年2020年8月3日からストップ高(安)のルール変更が実施されていたことをご存知でしょうか?
従来は、3日連続でストップ高(安)のまま売買が成立しない銘柄は、翌営業日から制限値幅を2倍に拡大していました。
そして変更後は、2日連続でストップ高(安)のまま売買が成立しない銘柄は、翌営業日から制限値幅を4倍まで拡大することになりました。
この制度変更の目的は投資家保護とも言えますし、海外投資家を募る目的とも言えそうです。
いずれにしても、この制度を理解しておくことで、ストップ高(安)銘柄への対応の準備は出来ると言えるでしょう。
目次
そもそも株価はその取引価格に応じて、上限価格と下限価格が設定されています。
投資家保護の観点から、株価に対する限界価格を設定することで値動き制限しているのです。
最近ではコロナショックによる相場の混乱がありましたが、パニック売りともいえる状況が続きました。
もちろん、機関投資家にとっては絶好の稼ぎ時であり、暴落シナリオが連日展開され、急な買い戻しが入るという相場を数か月に渡って繰り返しました。
過去ではリーマンショック、東日本大震災でも同様の相場がありました。
こうした、大きな先行き不安に市場が晒されると、保有している株がいきなり紙屑になるのを防ぐ意味で値幅制限は必要になります。
株価が上昇する場合にも、値幅制限を設けることで、極度の過熱から急下落へと転じるリスクを緩和させる役割があります。
やはり上昇にも値幅制限を設ける必要があるのです。
サーキットブレーカーという制度があるのをご存知ですか?
日本では先物市場で取り入れられていますが、海外における値幅制限と言える制度でもあります。
海外では相場の過熱状況を冷ます為に、一定時間株式取引を停止する措置を取り入れています。
発端は有名なブラックマンデーで、1987年10月19日(金)、ダウ平均は22%を超える大暴落を記録しました。
当然、混乱は世界に波及し、大パニックとなりました。
その後、市場の大混乱を抑制する目的でサーキットブレーカー制度が導入されました。
段階的に基準を設けており、ダウが前日比10%を超えて下落すると最大1時間の売買停止から始まり、最大で当日の取引が打ち切りになるまで、3段階のレベルで作成されました。
近年、株式投資の過熱していた中国でも2016年より導入される等、諸外国でも値幅制限にて同様の制度が整備されています。
とはいえ、日本の証券取引では市場自体でのサーキットブレーカーのような売買停止制限がなく、銘柄個別に値幅制限を設けている為、投資家にとっては過熱しやすいとも言えます。
実際、8月に変更された値幅制限ルールの影響があったと考えられる銘柄も散見されます。
東証マザーズやジャスダックなど新興市場では小型株と位置付けられていることもあり、業績の上方修正や新たなトピックが、過度に影響するケースが増えています。
変更後制度では2日連続でのストップ高で売買不成立であれば、値幅制限が4倍と拡大することから、市場規模の小さい新興市場は影響を受けやすいと言えます。
一方で、もともと東証より値動きの大きい市場でもあることから、反動も大きいことが目立ちます。
バイデン相場で日経平均が大きく上昇を続け、ダウが最高値を更新する中、新興市場は下落が続いていました。
ストップ高が続いた場合の例を考えてみましょう。
以前でしたら300円の株が3日連続ストップ高(売買不成立)で540円でした。
4日目もストップ高(売買不成立)だと700円となります。
8月以降では、300円の株が2日連続ストップ高(売買不成立)で460円です。
そして、3日目もストップ高(売買不正立)だと780円まで上がります。
資金運用効率は従来4営業日で233%でしたが、3営業日で260%まで跳ね上がりました。
流れに乗れば大きな利益を得る機会であることは間違いありません。
一方で、機関投資家が株価を操作する時間軸が短くなったとも言えますので、そのスピードに注意する必要があります。
機関投資家の利確タイミングが従来に比べて、見え難くなっているとの声も聞かれます。
大口資金の運用としては、値幅制限の拡大は運用益の拡大に繋がり、資金効率の改善に直結します。
なぜ、この銘柄がここまで連騰するのか?と不思議に思える値動きは以前から見かけますが、制度変更に伴い、そのスピードが加速しているのです。
そして、急反転するタイミングが突然であったりしますので、個人投資家はかなり注意が必要となります。
値幅制度の変更から間がないものの、当面はこのルールで市場は機能していくことでしょう。
日本版のサーキットブレーカーとして、十分な機能を果たすことを期待していますが、大きな利益を狙う機会としても、注目の変更であったと言えるでしょう。
そして、大きな注意が必要であることも事実です。