買いだけでなく、売りから入ることもできるので、株価が値下がりしていても利益が期待できるのが魅力です。しかし、昨日まで空売りが可能だった株が、今日は空売りが禁止になっているということがたまにあります。
これは、証券会社が空売りに規制をかけたためにおこるもので、この規制の正式名称は「貸借取引の申込停止措置」といいますが、一般的に「売り禁」といわれています。
なぜ、証券会社はこのような措置をとるのかを解説します。
目次
信用取引は、証券会社に委託保証金を預け、証券会社から株を借りて売買を行います。
株の現物買いと違うのは、委託保証金の3倍の金額の取引ができること。
買いだけでなく、売りからも入ることができるので、株価が値下がりしているときでも利益を上げることができます。
信用取引は制度信用と一般信用の2種類があります。
制度信用は借りられる期間が6か月と決められていて、制度信用で売買できる株は「貸借銘柄」と呼ばれます。
また、制度信用では買いしかできない株もあり、こちらは「貸借融資銘柄」と呼ばれます。証券会社は投資家に貸し出す株が足りなくなると、株を日本証券金融会社から借りてくることがあります。
制度信用で売買している株はあくまで借りたものであり、6か月すると返済しなくてはなりません。6か月目の最終日までもっていると強制的に決済されてしまいます。
決済にかかった費用は投資家が負担することになるので、返済期限はしっかり覚えておくようにしましょう。
一般信用は証券会社と投資家との間で取引が成立します。
返済期限はとくに決まっていませんが、長く持っていればもっているほど手数料がかかるので注意が必要です。
信用取引は実際の株を売買するわけではなく、証券会社から株を借りて取引をします。そして、信用取引のために必要な株や資金を証券会社に貸し付けているのが、日本証券金融会社(通称日証金)です。
証券会社が日証金から借りることのできる株を「貸借銘柄」といいます。
ですが、あまりに大量の空売り注文が入ってくると、日証金は資金調達ができなくなってしまいます。
資金調達が間に合いそうにない銘柄があると、日証金はまず「貸株注意喚起」を証券会社や投資家に公表します。
貸株注意喚起は規制ではなく、状況を改善するために注意を促すものです。
この時点では売りも買いも自由にできます。貸株注意喚起で注文の状況が改善されれば解除となり、とくに何も起こりません。
しかし、改善されなければ、貸借取引の申込停止措置つまり、売り禁が発動することになります。
売り禁になった銘柄は、新規で売りの注文を入れることができません。そうなると、空売りの勢いが一時的に弱くなり、大量の買戻しが発生することがあります。
そのため、短期間に株価が急上昇することがあります。これを踏み上げ相場といいます。
踏み上げ相場を狙ってさらに買いが入るため、株価の上昇はさらに勢いを増します。
とはいえ、踏み上げ相場は長く続くことはありません。踏み上げ相場の熱が下がると、株価は急激に下げに転じます。売り禁になった株はしばらく乱高下が続く傾向があります。
しかし、株はあくまで確率です。必ずこうなるという保証はありません。上げが長く続く可能性もあるれば、悪条件があると下がり続けることも考えられます。
どちらにしても、先が読みにくい相場であることは認識して取引するようにしましょう。
売り禁ではなく、「逆日歩」が発生する場合もあります。
日証金は信用取引に必要な株が足りなくなると、機関投資家などから借りて調達します。このときに発生する費用が逆日歩です。
逆日歩は買いを持っている方が受け取り、売りを持っている方が負担するという仕組みになっています。つまり、空売りしている人はコストが増大することになります。
逆日歩が発生すると、買いの勢いが強まり、短期的に株価が急上昇することがあります。
売りを持っていた方が逆日歩を避けるため買いを入れ、買いを入れた方はますます買いを入れるためです。
売り禁ではなく、「増担保規制」がとられることもあります。
信用取引は委託保証金を証券会社に入れますが、貸株注意喚起が解消されないと委託保証金が増額される措置がとられることがあり、これを増担保規制といいます。
売りが多すぎるときだけでなく、信用取引が加熱しすぎていると判断された銘柄に対し、相場を平常に戻す目的で発動されます。
増担保規制が出た後も株価は乱高下しやすくなるので注意が必要です。
株価を正確に予想することは、まず不可能です。売り禁になった株は投資家の様々な思惑によって値動きが激しくなり、うかつに手を出すと非常に危険です。
投資で大事なのは、勝ち続けることより、負けないことです。投資資金を大きく減らすことのないよう、資金管理は万全にしてください。