2019年8月14日に、米国のニューヨークダウ工業平均が、800ポイントの下落をしました。
その原因は、米国2年債の利回りが10年債より高くなる、逆イールド発生だと言われています。逆イールド発生と景気後退の強い相関は、過去2回のバブル崩壊でアノマリーとして認識されています。
本記事では、過去の逆イールド発生による米国株暴落を検証し、今後の投資計画について解説します。
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2019年に入り、米中貿易戦争が本格化する中、世界中の景気が減速していました。米国では景気の予防対策として利下げを進めていましたが、長期国債金利の下落が早く、短期国債の金利を下回ることが、度々観測されていました。
そんな中ついに、アノマリーと言えるイベントとして、米国2年債の金利が10年債の金利より高くなる逆イールドが発生しました。
逆イールド自体は、2000年と2008年にも発生しており、その時は今回ほどの株価暴落は起きませんでした。
今回の米国株暴落は、アルゴリズム取引と呼ばれる、プログラミング売買が主流になっていたことが原因のようです。アルゴリズム取引はほぼすべての機関投資家で行われており、今回の逆イールドも当然設定されているはずです。同じ条件に対し、一斉に売り注文が発生したため、過去2回の逆イールドでは考えられなかったほどの、株価暴落が起きたのでしょう。
そもそも逆イールドが発生すると、なぜ株式が売られるのでしょうか?
債券の利回りが株価に、そこまで直接的に関係するとは思えません。まず、逆イールド発生が直接的に意味することは、銀行が融資で利益を上げられなくなるということです。そのため融資が減り、マネーの流れが悪くなります。
企業の中には、銀行融資によって運転資金を回している場合もあるので、融資の減少や停止は倒産につながります。融資の減少でマネーの流れが悪くなり、倒産する企業が出てくれば、連鎖倒産や失業で不況がやってきます。これが、逆イールドが恐れられている理由です。
実際、2000年のITバブル時と2008年のサブプライムローン問題の時も、FRBが利下げによって逆イールド解消に動きましたが効果はなく、株価暴落により資産価値の目減りが追加され、深刻な不況入りとなりました。
このときのFRBの利下げは、企業業績の停滞を助けるものとして市場に受け止められました。そのため、長短金利が正常化しても、業績悪化を警戒して株式が売られたのです。つまり、金融政策により逆イールドが解消されるタイミングが、株式市場にとって最も危ない時と言えるのです。
ここまで、過去2回の逆イールド発生を振り返り、株価への影響を検証してきました。投資家にとって重要なのは、すぐに株式投資から資金を引き揚げるべきなのか?というところでしょう。これについても、過去の実績をもとに投資判断を検証してみたいと思います。
まず、逆イールド発生から実際に不況入りするまでの平均期間は、22か月となっています。
約1年10か月は、不況入りすることなく、利下げによる資金循環の回復で景気は維持されていました。それどころか、ニューヨークダウ工業平均で言えば、逆イールド発生から30%も株価が上昇しました。
その後、金融政策による景気下支えが限界に達し、不況入りすると、20%以上の株価下落を記録しました。そして1~5年間、株価は冴えない展開が続きました。
この実績をもとに米国株投資を考えると、不況入りの6か月前である16か月後までは投資を続けても良さそうです。つまり2020年中は、投資信託や個別株投資などで米国株を保有できそうです。
しかし、先日の株価急落で、機関投資家も損失を抱えている可能性があるので、すぐにまとまった金額を投資するのは危険です。10月の秋口にかけて小額投資を積み上げていけば、年末から来年には利益が出るかもしれません。
一方で気を付けておきたいことがあります。それは、今回の逆イールドによる株価の暴落が、アルゴリズム取引主流のマーケットで初めて起こったということです。過去2回の逆イールド発生時はトレーダーが株式の売買をしていたため、今回のような暴落はありませんでした。その意味では、逆イールド発生に対する株価の反応が変わってきているのです。
株価は企業業績を反映すると考えれば、中長期の投資でアルゴリズム取引は無視できるといえるかもしれませんが、不測の事態にも対応できるようにしておくべきでしょう。
サブプライムローン問題以降、初めて発生した逆イールドについて、過去2回発生した時の経済と株価の動きを振り返り、今後の投資方針について解説しました。
過去と異なる点は、現在の株式市場がアルゴリズム取引で支配されており、実際の株価の反応も変わってきているということです。本記事より、過去と現在の違いを認識し、あなたの資産を守る投資行動の助けになれば幸いです。