株式相場は常に変動しています。しかし、株式相場が固定されて動かなくなるときもあります。
例えば、証券取引所のシステム障害などです。2020年10月に起こった東京証券取引所のシステム障害は大きな話題となりました。
そして、もう一つストップ高・ストップ安というルールがあります。このルールが実行されると特定の銘柄の取引が行えなくなります。つまり、株価が1日に変動できる値幅は決まっているということです。
これについて詳しく見ていきましょう。
目次
株式市場では原則として投資家の自由な売買が認められていますので、投資家は売買したい株式を好きなだけ購入したり、売却できるのが原則です。
しかし、前営業日の終値又は気配値を基準株価として、この基準から1日に変動できる価格の上下が定められています。
そして、値幅制限の上限いっぱいまで株価が上がることをストップ高
値幅制限の下限いっぱいまで株価が下がることをストップ安といいます。
具体的な値幅制限は以下のとおりです。
価格 | 値幅制限 |
---|---|
~100円未満 | 30円 |
100円以上~200円未満 | 50円 |
200円以上~500円未満 | 80円 |
500円以上~700円未満 | 100円 |
700円以上~1,000円未満 | 150円 |
1,000円以上~1,500円未満 | 300円 |
1,500円以上~2,000円未満 | 400円 |
2,000円以上~3,000円未満 | 500円 |
3,000円以上~5,000円未満 | 700円 |
5,000円以上~7,000円未満 | 1,000円 |
7,000円以上~10,000円未満 | 1,500円 |
10,000円以上~15,000円未満 | 3,000円 |
15,000円以上~20,000円未満 | 4,000円 |
20,000円以上~30,000円未満 | 5,000円 |
30,000円以上~50,000円未満 | 7,000円 |
50,000円以上~70,000円未満 | 10,000円 |
それでは、なぜストップ高・ストップ安という値幅制限が設けられているのでしょうか?
それは証券取引所の役割である、適正な株式価格の形成と急激な株価の変動から投資家に不測の大きな損害や混乱を与えないという投資家保護の目的があります。
特に後者の投資家の保護は最も重要な目的です。
例えば、とあるA社に関して、経営に関わる重大な会社の不祥事が起きたとしましょう。
株式市場が開幕すれば、おそらくA社の株価は下落するでしょう。株価は本来は企業の成長性や将来性を考慮して、決定されるべきものですが、市場では投資家心理が働きます。
つまり、上昇する株価はさらに上昇し、下落する株価はさらに下落するのです。売りがさらに売りを読んで、投資家が正常な投資判断を行えなくなります。
結果として、株価の異常な暴落が起きるのです。
しかし、ストップ高・ストップ安というシステムがあれば、これがリミッターのような役割を果たし、異常な値動きを物理的に防止してくれます。
投資家の恐怖感や過熱感が緩和されて、パニック売りなど正常な判断力が欠けた取引を抑制することができます。
また、ストップ高・ストップ安によって取引が終了した場合は、株価を留めたまま1日置くことで過熱した投資家心理をクールダウンさせる効果もあります。
ストップ高・ストップ安というルールを知らない投資家にとっては株価が動かなくなると不安かもしれません。
しかし、ストップ高になるとどのようなことが起きるのか?実際のパターンを知っておけば冷静に対応することができます。
ストップ高になるとどうなるのか、その後の値動きを含めて確認してみましょう。
値幅いっぱいまで株価が上昇して、ストップ高銘柄に指定されるとこれ以上の売買が行えなくなります。
仮に売買ができても値幅上限でストップしている銘柄を売りたいという人はいないでしょう。
したがって、後出しじゃんけんのようにストップ高銘柄を購入することはできない、難しいということを理解しましょう。
ストップ高・ストップ安はあくまで1日の株価の急激な変動を阻止するものですので、翌日になればリミッターが外れて再び売買可能です。
しかし、翌日に相場がどのように動くのかは誰も予想できません。毎日連続してストップ高を更新する場合もあれば、翌日は反動で下落する場合もあります。
株価の上昇トレンドにあやかろうと多くの投資家が「買い」に走る可能性もありますが、その場合は相場が加熱して本来の価値に合わない水準まで値上がりするかもしれません。その結果、株価本来の価格まで戻そうとする圧力が加わり、ストップ高の翌日には一転して下落す可能性もあります。
このようにストップ高の翌日には再度上昇する可能性と一転して下落する可能性があり、相場がどのように動くのかは誰にも分かりません。どちらにしても相場はかなり不安定な状況です。
それでは実際にストップ高になるまで株価が上昇して、取引ができなくなった銘柄を見てみましょう。
ストップ高の連続記録を打ち立てたのはバリュークリック・ジャパン社です。バリュークリック・ジャパンはホリエモンこと堀江貴文氏が代表となったライブドア社の前身です。
当社のストップ高記録はなんと連続17日 (2004年11月24日~12月16日)でした。
では、なぜ17日も連続で株価が急騰したのでしょうか?
発端はホリエモンが当社の株式を100分割すると発表したことにあります。株式が分割されることで1株当たりの価値が低下し、多くの投資家が購入しやすくなりました。
当社は現在は上場廃止となっているため、チャートがありませんが、噂によると株式分割によって45倍に株価が膨れ上がったそうです。
言うまでもありませんが、この株価高騰を狙って、ホリエモンは株式を大量に売却し、莫大な利益を上げました。
結果として、ライブドア社の株価は後に大暴落するので、損をしたのはホリエモン信者と呼ばれていた人たちでした。
2021年に開催されているオリンピックによってストップ高になった銘柄もあります。
2021年7月25日にスケートボード 男子ストリートで堀米雄斗選手が金メダルを獲得、翌26日に女子ストリートでも西矢椛選手が金メダルを獲得、さらに中山楓奈選手が銅メダルを獲得しました。
その結果、スケートボードの販売を行っているモリトは前営業日から11.9%株価が上昇し、ストップ高となりました。
モリトは7月13日に発表した2021年11月期上半期の決算で、国内でサーフィン・スケートボード関連商品の売上高が増加していることがわかっていました。
今回のメダルラッシュによって、さらにスケボー関連製品の伸びが拡大するとの予測があり、投資家の期待感を背景に株価が上昇、ストップ高となりました。
さらに女子卓球の伊藤美誠選手の東京五輪での活躍が好感され、同選手とアドバイザリー契約を締結しているコラントッテの株価が急上昇。こちらも7月26日にストップ高となりました。
今後もオリンピックでの日本人選手の活躍があれば、関連株がこのように値上がりするかもしれません。
九州を中心にファミリーレストランを展開するジョイフルが2021年7月27日に日本で最も人気のあるYouTuberの一人であるヒカル氏とコラボレーションしました。
新商品「ヒカル考案 冗談抜きで旨いハンバーグ」「ヒカル考案 冗談抜きで旨いハンバーグ&えびフライ」を全国のジョイフルとジョイフルが出店する通販サイトで販売すると発表。
これによって、ジョイフルの株価は高騰し、27日に一時ストップ高となりました。
株式が1日に変動できる値幅は決まっており、一定の値幅を超えるとストップ高・ストップ安というルールが適用されて、取引ができなくなります。
過去最多の連続記録を出したバリュークリック・ジャパン社は株式100分割という異例の決定によってストップ高となったので、このような事態は起こらないと予想されますが、オリンピック需要や人気インフルエンサーとのコラボなど社会現象によってストップ高になることは珍しくありません。
ストップ高になると取引ができなくなり、短期売買を主軸にするトレーダーには大きな影響があります。取引をしている銘柄にストップ高・ストップ安の兆候がないかこまめに確認しましょう。