「株の空売りではロスカットしないと死亡する!」このように言われます。
これは本当です。空売りでは現物買い以上にロスカットが重要です。
そこでこの記事では、株の空売りのロスカットを初心者目線になってやさしく解説していきます。
目次
株の空売りでロスカットが重要と言われる理由は次の2つです。
空売りでは株価に天井がありません。
そのため、損失が無限大に拡大する恐れがあります。
現物買いであれば株価が0円になればそれ以上の損失はありません。しかし、空売りでは株価の上限がないため、100円だった株価が1,000円、1万円と大幅に上昇してしまうこともあるのです。
損失額も大きくなる可能性があるため、ロスカットしないと非常に危険なのです。
空売りでは「レバレッジ」を掛けられるという特徴があります。
レバレッジとは、証券会社に担保金を預けて口座資金以上のお金で取引ができるという仕組みです。担保金の最大約3.3倍の取引が可能です。
例えば、50万円の担保金でレバレッジ3.3倍の取引をするなら、
50万円×3.3=165万円
となり165万円の取引ができます。
しかし、取引額が増えると損失額も増えます。
株価が300円の銘柄を購入したあと10円下落したケースで、取引金額ごとの損失額を比較してみましょう。
取引金額 | 損失金額 |
---|---|
30万円 | 1万円 |
50万円 | 5万円 |
100万円 | 10万円 |
取引金額が増えるほど損失金額も大きくなっているのが分かります。
レバレッジを上げて取引金額が増えるほど、ハイリスク&ハイリターンの取引になりがちになるため、ロスカットしないと手痛いダメージを負う危険があります。
株の空売りのロスカットを決める目安は次の4つです。
ロスカットの目安で最もおすすめしたいのが、取引した理由が無くなったときです。
取引する際はお使いの手法の条件が整ったなどの何らかの理由があったはずです。その理由が無くなってしまったらロスカットします。
例えば、空売りではよく「戻り売り」が採用されます。
戻り売りとは、下降トレンド中の一時的な上昇からの反転を狙う手法です。
戻り売りで売った場合、以下の位置にロスカットを置きます。
上記を超えてしまうと戻り売りは失敗したことになり、戻り売りで売った根拠が無くなってしまうからです。
「移動平均線」のようなインジケーターのサインが騙しだったときもロスカットの目安になります。
上記のように、移動平均線の反発を期待して売ったものの下落せず、逆に移動平均線を上に超えてしまうとサインは騙しだと判断できます。
取引した理由が無くなっているためロスカットをしましょう。
値上がり率でロスカットするといのもひとつの手でしょう。
事前に「〇〇%値上がりしたら撤退する」と決めておくのです。
よく使用される目安は10%です。
ただし、10%が適さないケースもあると知っておかないといけません。
例えば、値動きの小さい銘柄だと得られる利益が少なく、損失額が10%だと取り返すのが困難です。同様の理由で利益率の低い短期トレードをする場合も適していません。
そのため、値上がり率でロスカットを決めるときは取引する銘柄やトレードスタイルなどに合わせてロスカット基準を調整していく必要があります。
ロスカットを損失額で決める方法もあります。
損失額で決める場合は、ストレスを感じない金額にしておくことがポイントです。
ロスカット金額が大きいと心理的な拒否感が大きくなり、ロスカットラインの移動やロスカットの拒否などの行動に走りやすくなります。
損失を確定できない事態になり、大きな損失を出してしまう原因にもなりかねません。
ロスカットを取引期間で決めるという手もあります。
とくに長期投資をする人に薦めたいです。空売りでは、保有日数によって発生する取引コストがあるからです。
取引コストは保有日数が長くなるほど大きくなります。
よって、「売ってから1カ月で買い戻す」などと事前に期日を決めておき、その日になったら何があっても決済するようにするというのもひとつの方法です。
株の空売りのロスカットで以下が大事です。失敗を避けるために目を通しておいてください。
ロスカットはルール化しておくようにしましょう。
取引してから決めるのではなく、取引前にルールとしてしっかりと明確にしておくのです。
そうれば取引中にどこでロスカットすれば良いか迷う必要がなくなり、撤退すべきポイントや時期がはっきりと分かります。
ロスカットラインの移動は絶対禁止です。
株価がロスカットラインまで迫ってくると、適当な理由をつけてロスカットラインを変更する人がいます。
例えば、以下のような理由です。
しかし、ロスカットラインを変更してしまうと取引計画が破綻してしまいます。それで利益が上がったとしても、あまり意味のあるものではありません。
それどころか再度、ロスカットラインの移動を誘発する恐れがあり、良いことはひとつもないです。
逆指値注文でロスカットを自動化しておくのも重要です。
逆指値注文とは、現在の株価よりも不利な株価に入れる注文を指します。指定した株価になれば証券会社が注文を発注してくれるため、ロスカットが自動化できるのがメリットです。
例えば、株価500円の銘柄を売ったとし、520円でロスカットしたいとします。
この場合520円に逆指値注文を入れておけば、株価が520円になれば自動でロスカットされるのです。
そのため、意思が弱くてロスカットできない人でも損を確定させやすいです。また、チャートを見ていなくてもロスカットできるのもメリットになります。
株の空売りではロスカットしないと非常に危険であり、次のようなデメリットがあります。
ロスカットしないと確実に損失が増えます。
ロスカットは損失を最小限に抑えるための予防策のようなものです。それをしないと、いつか手痛い失敗を確実にします。
いわゆるコツコツドカンの状態になりやすいです。
実はロスカットしなくてもある程度の期間は勝てます。相場は戻る傾向があるからです。よって、保有株が損失になっても利益になるまで待っていれば良いのです。
しかしずっとは勝てません。いつか大きな負けが必ずきます。
例えば、相場が戻らずに大きな上昇トレンドが発生してしまうというケースです。
そのたった1回の負けですべて失うというのは、ロスカットしないで失敗する典型的なパターンなのです。
ロスカットをしないと損失が増えるだけでなく、最悪の場合、「追証」になり追加入金を支払わないといけなくなるため、ロスカットは確実にしましょう。
■追証とは
追証とは、信用取引で委託保証金(担保金)が不足して追加入金が必要になった状態です。
ロスカットしないと資金効率が悪くなり投資機会を逃します。
ロスカットしないでいる銘柄に使用している資金が拘束されるからです。
株式市場では多くの銘柄があり、その中には取引チャンスである銘柄も存在します。
しかし、そうした銘柄を見つけても資金が足りないと取引できません。ロスカットしないでいると、資金不足になる可能性もあるのです。
一方、ロスカットをすれば、資金を自由に動かせるようになるため新たな取引チャンスが来たときに迅速に行動可能です。
ロスカットしないと冷静な状態で取引できなくなることがあります。
保有している株が損失を抱えているため、さらに損失が拡大してしまっていないかや不利な材料が出ていないかなど不安になってしまうからです。
こうした状態でいると、他の取引にも影響を及ぼします。
冷静でいられないため、無茶な取引をしたり、取引ルールを破ったりと良くない行動をして損失を拡大させ、悪循環になりやすいです。
空売りではロスカットしないと取引コストが増加します。
以下のような保有日数によって発生する取引コストがあるからです。
貸株料とは、証券会社から株を借りる際に発生するコストです。つまり、レンタル料となります。空売りは証券会社から株を借りる取引方法です。よって、レンタル料が発生するのです。
逆日歩とは、証券会社で株が在庫切れになった際、他所から借りてきたときに発生する費用です。
証券会社が貸し出せる株数には上限があり、在庫切れがあります。在庫切れになると証券会社は他所から借りてきますがそのときに費用が発生します。この費用は投資家が負担しないといけません。
貸株料と逆日歩ともに保有日数に掛かるため、保有日数が長くなるほど金額が大きくなります。
例えば、逆日歩は「1株あたりの逆日歩×保有株数×建玉の保有日数」と計算します。よって、1株あたりの逆日歩が0.1円で保有株数が2,000株なら以下のとおりです。
保有日数 | 逆日歩 |
---|---|
10日 | 2,000円 |
30日 | 6,000円 |
50日 | 10,000円 |
このように、空売りでは保有日数に掛かる貸株料と逆日歩があるため、ロスカットしないと取引コストが増加してしまうのです。
株の空売りのロスカットについてまとめると次のとおりです。
株の空売りではロスカットが欠かせません。この機会に最低限の知識を身に着けておきましょう。