「東証の空売り比率とはどんな指標か?」
この記事は空売り比率について知りたい人に向けて書きました。
空売り比率の使い方や目安、調べ方を分かりやすく解説しているため、ぜひ参考にしてください。
目次
東証の空売り比率とは、1日の売り注文に対して空売りがどれくらいの割合あるかを表した指標です。
つまり、空売りされてまだ買い戻されていない株数の比率になります。
計算方法は以下のとおりです。
空売り比率(%)=空売り金額÷売り注文の合計金額×100
例えば、空売り金額が1,000万円のとき売り注文金額の合計が3,000万円なら、
1,000万円÷3,000万円×=33%
となり、空売り比率は33%です。
実際の空売り比率は「東証(東京証券取引所)」の「空売り集計」をもとに計算されます。
上記の「空売り(価格規制あり)」と「空売り(価格規制なし)」の比率を足したものが空売り比率です。画像の場合は「37.1%+13.3=50.4%」になります。
東証の空売り比率の使い方は空売りの数がどれくらいかを見て、将来の買戻し需要を予測するのに使用します。
空売りは信用取引であるため、返済期限があります。「制度信用取引」であれば返済期限は6ヶ月です。
そのため、空売りの割合が増えてくると買い戻し需要が高まっていると判断できます。買い戻しによって株価が上昇する可能性があるのです。
では、空売り比率の数字はどのくらいを目安に判断されているかですが、一般的には以下のようになっています。
数字は30%以上が目安です。数字が高くなるほど空売りが多くでていることになり、株価の上昇の可能性が高いと判断されます。
空売り比率の数字は近年、高い水準で推移しています。
2015年以降からは40%を超える状態が続いており、昔のように30%以上で底値圏という考えが通用しづらくなったと言われています。
実際、以下は2020年3月~2022年9月の空売り比率のチャートですが40%以上の推移している時期が長いです。(空売り比率は青線・赤線は日経平均)
空売り比率が高くなった理由は以下の3つだと言われています。
2013年1月より「信用取引の証拠金規制の緩和」が行なわれました。
それによって、信用取引の回転売買が可能になったのです。
「空売り→買戻し→空売り→買戻し」という回転売買を行なった場合、信用取引の売り注文の金額が増加するため、空売り比率を高める要因になります。
2013年11月5日には「空売り規制の緩和」が行なわれました。
空売り規制の緩和とは、「当日基準価格(通常前日の終値)から10%以上下落した銘柄へ51単元以上に空売りは禁止する」というものです。
例えば、株価100円の銘柄ならその10%以下である10円以上下落すると、51単元以上の売りが停止されます。
51単元以上というのはその銘柄が100株で取引されるのであれば、5,100株です。よって、5,100株以上の売りはできないということです。
空売り規制の緩和がある前は、「50単元超の空売りを直近公表価格以下の価格での発注を禁止する」とうルールでした。
しかし、空売り規制の緩和後は当日基準価格から10%以上下落した銘柄のみが対象となることになったのです。
そのため、空売りできる量が大幅に増え、空売り比率の増加に繋がったとされています。
2012年から始まった、アベノミクスの影響もあるとされています。
アベノミクスによって株価が高くなったのと、日銀が「ETF(証券取引所に上場している投資信託)」を購入し続けており、「ボラティリティ(株価の変動幅)」が高くなったのが原因とも言われています。
東証の空売り比率の調べ方は簡単で、インターネットを使えばすぐに見つかります。
まず、「東京証券取引所」が集計して公開してくれています。
先にも解説しましたが、「空売り(価格規制あり)」と「空売り(価格規制なし)」の比率を足したものが空売り比率です。
また、以下のようなサイトを利用するのも良いでしょう。
こちらのサイトでは空売り比率をチャートで確認でき、さらに日経平均の動きとも比較が可能です。チャートだけでなくデータを表で記載してもくれているため、非常に分かりやすいです。
空売り比率と間違いやすい指標が「空売り残高比率」です。
空売り残高比率とは、空売り残数を1日の出来高で割って表した指標です。
計算方法は「空売り残数÷1日の出来高×100(%)」になります。
これに対して、空売り比率は空売りの金額を売り注文の合計で割って表した指標です。
計算方法は「空売り金額÷売り注文の合計金額×100(%)」となります。
また、空売り残高比率は個別銘柄に対する指標です。特定の銘柄の空売り状況を調べたいときに使用します。
一方、空売り比率は市場全体に対する指標です。使用するのは市場全体の空売り状況を確認するときです。
このように、空売り比率を空売り残高比率は似ているようで異なるため、違いをしっかりと理解しておきましょう。
空売り残高比率 | 空売り比率 | |
---|---|---|
指標の持つ意味 | 空売り残数が1日の出来高に対してどれくらいあるか? | 空売りの金額が売り注文の合計に対してどれくらいあるか? |
計算方法 | 空売り残数÷1日の出来高×100(%) | 空売り金額÷売り注文の合計金額×100(%) |
適用範囲 | 個別銘柄 | 市場全体 |
東証の空売り比率とは、1日売り金額の合計に対して空売り金額がどれくらいあるかを表した指標です。
空売り比率は将来の買戻し需要を予測するのに使用します。空売り比率が30%以上であると、将来的に買い戻しによる株価上昇の期待が高まると判断するのです。
しかし、近年は空売り比率が高まっており、40%以上で推移していることも珍しくありません。その理由は以下の3つとされています。
空売り比率だけで判断するのは危険なため、チャート分析や企業分析などその他の分析方法を組み合わせていくのがおすすめです。
空売り比率はあくまで分析方法のひとつとして使用するようにしましょう。
わかりやすかったです。